次世代を生きる女性たちへ伝えたいこと。チャレンジする気持ちは、いつまでも止まらない【こころとからだと、人生と vol.4】
私たちのこころとからだを繋ぎ穏やかにしてくれるもの、それは一体なんでしょうか? 美味しい食事、健やかな生活、大切な人とのひととき……。そのバランスの取り方は、十人十色。さまざまな女性たちが思う「こころとからだの向き合い方」を、彼女たちの人生やキャリアを通してシェアしていきます。 第四回は、アンジェライト創業者で長年ファッション業界の第一線で活躍する、デザイナー小森谷則子さんのストーリー。 - アンジェライトは2008年に発売されました。まだまだ生理に関するプロダクトが少なかった時代ですが、防水性と透湿性を兼ね備えたサニタリースパッツという斬新なアイテムを思いついたきっかけはなんだったのでしょうか? 開発のきっかけは、とても疲れていた仕事帰りの電車内での出来事でした。目の前に座っていた女性が降りたので、すぐにその席に座ったんです。帰宅すると娘が「お母さん、ズボンに赤いのがついてるよ」と言うので見てみると、ベージュのチノパンに赤いシミがしっかりとついていました。その時自分は生理ではなかったので「あのとき、前に座っていた人が生理中だったのかもしれない」とすぐに気がつきました。本人も気づいていなかったのかもしれないし、気づいていてもどうしようもなかったのかもしれない。どちらにせよ、とても切ない気持ちになりました。私自身、当時は子宮筋腫があり経血の量が多く、とても他人事には思えなかったんです。 あの経験が自分の中での意識の転換点だったように思います。こうした悩みを抱えるのは私だけではないはずだと、心から思いました。生理に関する悩みは、体質や環境によって本当に人それぞれ。私のように量が多かったり、移動が多い仕事をしていたりする人にとっては、深刻な問題です。だからこそ、「私自身が使いたいと思えるものを作ろう」と強く思い、アンジェライトの開発へと繋がりました。 - そうした原体験から生まれた生理への問題意識ですが、実際に製品化にはどのように至ったのでしょうか? 大手通販会社でデザイナーとして働いていた時があったのですが、そこで「何か新しいことをやりましょう」という話があり、私はディレクションとして関わることになりました。 そんなとき、たまたま社内の女性社員や取引先の女性たちと話をしているうちに、「生理に関する商品をつくれないだろうか」という声が自然と集まったんです。日常の会話や雑談の中から、女性たちが日々感じている不便や不安が浮かび上がってきて、「これは本当に必要とされている」と確信しました。私自身も、その頃から「誰も手をつけていないこと」に対して挑戦してみたいという気持ちが強くなっていたので、そういった意味でも非常に意義を感じたのです。 ただ、その頃はまだ生理についてオープンに語れる雰囲気はなく、「生理用品」というだけでタブー視される空気がありました。そうした社会背景もあって、社内でも最初は戸惑いや反対の声が多くありました。でも女性社員たちはとても関心をもってくれて、「こうだったらいい」「こういう素材がいい」とたくさん意見を出してくれました。社長に提案したところ、「これは製品化すべきだ。誰もやっていないからこそ、やる価値がある」と賛同していただき、正式に「アンジェライト」プロジェクトがスタートしました。 - アンジェライトは特許も取得した今までにない製品ですが、開発で大変だったことはありますか? 一番の課題は、「どう売るか」。製品自体の必要性や良さは確信していましたが、生理というテーマをどう表現して届けるかは非常にデリケートな問題でした。テレビCMを作るにも、「何をどう見せたら伝わるのか」がわからない。社内でも「これは良いけど、売れるの?」という声が多く、試行錯誤の連続でした。 製品の要である素材開発も一筋縄ではいきません。最初に使っていた生地は厚みがあり、服に響いたり着心地に課題があったりしました。そこから「もっと薄く」「もっと快適に」「肌に優しく」と改良を重ね、スイス老舗生地メーカーであるシェラー社や、三菱などの大手素材メーカーと連携して、理想的な生地を開発していきました。 最終的に完成した商品は、日本だけでなくヨーロッパ、韓国、中国などでも特許を取得するほど、国際的にも評価されています。特にヨーロッパは特許取得のハードルが高く、簡単には通らないので、それだけでも非常に大きな自信につながりました。 - 小森谷さんはアンジェライトの開発だけではなく、様々なキャリアを歩んでおられます。女性がバリバリと働くことが一般的ではなかった時代に、結婚や出産を経て、どのようにキャリアを構築していったのでしょうか? ...